このお酒は名前がなかったのです。「大吟醸 中取り 原酒」ですね。最初に善十郎氏が私にわざわざ持ってきてくれた出品酒から始まるのです。頂いた晩、有り難く利かせて貰いました。変に入賞を狙う、という姑息な所がない。姑息な酒は非の打ちようが無いのですが、だからどうした。蝋人形館の人形レベルですね。「俺の思う大吟醸はこれだ」と声を出さずに『呑めば分かるべし』と佇んでいる風情。市販酒ではないのですが私が欲しくなってしまった。そこで営業の稲上氏に打診すると「少しなら良いです」で、貰っちゃいました。市販用の酒でないので名前がない。蔵元も法人ですから、この酒の代表者は杜氏でしょう。と言う事でこうなりました。フレシュフルーティーではありません。高倉の健さんというとこれまた分かりにくいか。秋田の名人の一人が産み出した職人仕事の粋と表現します。